無理数の無理数乗 = 有理数となる場合 (2020年 横浜市立大/1986年 阪大)

 
 本題は「x, yが共に無理数として、xyが有理数となる場合は存在するか?」という実に興味深い話題を扱っています。(1)(2)は基礎レベルの問題ですが、(3)は難問です。

 (1)で「√2の√2乗」の√2乗が有理数(整数)であること、(2)で√2が無理数であることをそれぞれ示しているので、あとは(3)で「√2の√2乗」が無理数であることを示せれば解決するように見えますが、これは完全に大学側の術中です。

(1)の解答

 
 計算すべきは「√2の√2乗」の√2乗であり、√2の「√2の√2乗」乗ではありません。最も後者は具体的な計算が不可能なので、間違えることは無いと思われます。ちなみに後者の値を電卓で計算すると1.76083955588….となります。

(2)の解答


 本問もまた超がつく有名題です。背理法を用いた証明問題として一度は解いたことのある受験生が殆どだと思われます。

(3)の解答

 

 まさに「コロンブスの卵」のような解法で、なんと「√2の√2乗」が有理数なのか無理数なのかを知ることなく証明が完了します。

 上記の解法に気付けば5分とかからず非常にスッキリする問題ですが、多くの受験生は「√2の√2乗」が無理数であることの証明に固執して泥沼だったと思われます。

 一般に高校数学のレベルで無理数や有理数であることの議論ができるのは、有理数の冪根や対数のみであり、その他には無理数+有理数や無理数×有理数(≠0)が無理数である事が使える程度です。そして√2の√2乗が無理数であることを、前提知識を持たない受験生が証明することはまず不可能といえます。

 知識として円周率πや自然対数の底eが無理数であることを知っている人は多いと思いますが、実はπ+e,πe, πe, ee, ππについては未だに有理数か無理数であるかどうかは知られていません (eπは無理数であることが証明されている)。それ程までに、ある数が無理数かどうかを知ることは難しい問題と言えます。

√2の√2乗は無理数か?

 結論から言えば「√2の√2乗」は無理数です。これは、1934年に示されたゲルフォンド=シュナイダーの定理によって導かれます(もちろん証明等は割愛)。

「α を 0, 1 以外の代数的数、β を有理数ではない代数的数とすると、αβは超越数」

 代数的数とは、簡単に言えば有理数係数であるxのn次方程式 (n = 1, 2, …)の解となりうる複素数の集合を指し、そうでない数を超越数と呼びます。

 全ての有理数は整数a, bを適当に定めれば、ax+b = 0の解として得られるため代数的数です。従って超越数であれば必ず無理数となります。

 一方無理数の中にも代数的数は無数に存在し、例えば√2はx2 – 2 = 0の解として与えられるため、代数的数となります。すなわちα = β = √2とすればゲルフォンド=シュナイダーの定理によって「√2の√2乗」は超越数であることが分かり、超越数の性質から無理数であることが導かれます。

(補足): 対数を使った(3)の解法と1986年の阪大入試

 (1)及び(2)の流れを完全に無視していますが、上のように対数を持ち出すことも可能です。その場合利用した対数が無理数であることを示す必要がありますが、こちらは√2の√2乗と異なり高校生でも証明は可能です。

 本解法を試験場で思いつく可能性は限りなく低いですが、こちらの場合は(x, y)の組を具体的に得ることが出来ます。

 1986年の阪大理系でほぼ同様のコンセプトの問題が出題されていました(以下参照、問題文はhttp://server-test.net/math/06_osaka/より引用させて頂きました)。詳細は割愛しますが、(2)で、a = √3, b = log34とすればab = 2となり解決します。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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