かつて東工大の第一類では後期入試を廃止する代わりに、「試験科目は数学のみ」という非常にユニークなAO入試を行っていました。「入試時期が一般入試より早い」、「仮にAO入試に合格した場合でも、後の一般入試で東大など他大学の合格が決まった場合は辞退が可能」などの理由からAO入試としては受験者が多く、その分倍率も約30倍と狭き門でありました。
出題される問題は全部で4問で、試験時間の合計は何と5時間に及びます(実際には2問ずつを150分の試験時間で取り組みます)。これらは一般入試の試験時間と比べると極めて長く、その分問題の難易度も総じて高めです。
しかしながら、長い試験時間を存分に利用して色々と試行錯誤することで何とか突破口を開けるように設定されている事もまた事実です。今回取り上げる問題も、色々な試行錯誤の重要性が問われます。
与えられた漸化式自体は典型的な二項間漸化式であり、一般項をc1で表すこと自体は難しくありませんが、条件を満たすc1の決定は一筋縄ではありません。
1問辺り1時間15分という豊富な試験時間を頼りに、とりあえず色々なc1についてn=1, 2, 3あたりを検討して様子を探ることになります。
解答
与えられた数列の各項が素数であるか否かを議論することは一般には困難ですが、与えられた数列の一般項が(自然数)x(自然数)の形に因数分解が出来る場合は、因数の一方が1となる場合を除いて合成数となります。
このような条件に当てはまるのはc1=2の場合であり、この時cnはいわゆる「x^3+1」の形になっているので因数分解が可能で、n=1の場合を除いて合成数である事が導かれます。c1=9とした場合も同様に因数分解が出来ますが、この場合はすべての項が合成数となってしまい、条件を満たしません。
因数分解以外のアプローチとして、「数列の各項が共通の素因数を持つ事を示す」というものがあります。今回の場合一般項に登場する 8n-1=(7+1)n-1を7で割った余りが常に1であることを考慮することで、c1=7 (k = 6)とするとcnが全て7の倍数となることが分かります(素数はc1=7のみ)。ちなみに合同式によるアプローチ以外にも、漸化式を利用した数学的帰納法によっても同様の結論を得ることが出来ます。
コメント
解答だけ見るとあっさりしていますが、試験場では自分で条件を満たすc1を色々と代入計算しながら予測し、それぞれについて自力で方針を定める必要があるので歯ごたえはかなりのものです。
一般入試であれば非常に厳しい問題と言えますが、長い試験時間を利用して試行錯誤を繰り返し、何とか正答にたどり着きたい所です。