フラーレンの化学 (2003年 東大化学 第3問-I)


 フラーレンは炭素の単体の同素体の一種であり、大学入試でもしばしばその名前を問われる問題が出題されますが、基本的には脇役です。

 本問はそんなフラーレンにスポットをあてた珍しい一問です。

解答

問ア: z = 30

 図3-1よりC60-フラーレンでは2つの単結合と1つの二重結合が集まっています。二重結合はフラーレンの頂点2つに対して1つ形成され、フラーレンの頂点の個数は60個なので、二重結合の数は30と決定されます。

 もしオイラーの多面体定理 (多面体における頂点、辺、面の数をV, E, Fと置くと、多面体の種類よらず V-E+F=2)を知っていれば、それを利用することでC60-フラーレンには、五角形の面が12個、六角形の面が20個存在することが分かります。

 この時六角形の面1つにつき二重結合は3つ存在し、1つの二重結合は2つの六角形面に共有されている為、二重結合の数 = (20 x 3) ÷ 2 = 30個 とやはり決定されます。

 落ち着いて考えれば何とかなる問題ですが、突然複雑な多面体が登場したことで面食らった受験生も多かったと思われます。

問イ: (2)、(3)、(4)

 1, 3, 5-ヘキサトリエンはベンゼンのような芳香族化合物ではなく、シクロヘキセンのような(シクロ)アルケンに近い化学的性質を持つと予想されます。このことを念頭において記述(1)~(4)を吟味します。

(1): 1, 3, 5-ヘキサトリエンとハロゲン単体を反応させた場合、アルケンと同様に置換反応に対して付加反応が優先されるのでこれは誤り。
(2): 1, 3, 5-ヘキサトリエンにおける二重結合はアルケンと同様酸化されやすく、酸化剤である過マンガン酸カリウム水溶液を還元して脱色するのでこれは正しい。
(3): ベンゼンの場合と異なり、1, 3, 5-ヘキサトリエンの場合は以下の2つの化合物は互いに区別されるため、この記述は正しい。

1, 3, 5-ヘキサトリエンならばこの2つの化合物は区別される


(4): これはベンゼンと共通の性質であり、1, 3, 5-ヘキサトリエンに対して水素付加を行う事で、飽和炭化水素であるシクロヘキサンを与えるのでこれは正しい。

問ウ: A グラファイト(黒鉛)  B ダイヤモンド

 炭素原子に存在する4つの価電子のうち3つを結合に用いて形成される平面上の分子(グラフェン)が、分子間力によって多層構造になったものはグラファイトと呼ばれ、残る1つの価電子が金属における自由電子に相当する働きを持つため電気を通します。

 一方でダイヤモンドは炭素原子に存在する4つの価電子全てを用いて形成される3次元的な構造を持っており、グラファイトと異なり電気は通しません。

 本問は炭素の同素体に関する極めて基本的な知識問題であり落とせません。

問エ: トルエン

 フラーレンは一切の極性官能基を持たず、その極性は炭化水素に近いと推測されます。従ってトルエンのような低極性の溶媒には良く溶ける一方で、エタノールや水などの高極性の溶媒には殆ど溶けないと考えられます。

 一方で親水性のヒドロキシル基を多数に持つフラーレンはトルエンのような極性の低い溶媒には殆ど溶けず、エタノールや水などの溶媒に寧ろ溶けやすいと考えられます。

 以上の事からトルエンを用いた場合、最も効率よくかつ選択的に未反応のフラーレンを溶かし出すことが出来ると考えられます。

オ: n = 14 (途中式は以下)

 扱う化合物は目新しいですが、内容は標準的な凝固点降下に関する計算問題であり
「(凝固点降下) = (溶媒のモル凝固点降下) x (溶液の質量モル濃度)」の計算式に従ってnの値を決定します。但し、計算自体は中々に煩雑です。

コメント

 題材は中々に目新しいですが、問ア以外は標準レベルの知識及び計算問題となって居ります。問イ~エは確実に解答した上で、問オの計算ミスに注意して8割は確保したい所です。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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