条件付き確率と医療検査 (2020年 佐賀大学/2018年 旭川医科大)

 条件付き確率とは、ある事象が起こる条件の下で別の事象が起こる確率を指します。旧課程では数Cの確率分布で扱われていた影響で影が薄かった範囲でしたが、新課程で数Aに移行した後はその出題数を一気に増やした印象があります。

 「Aという条件のもとでBが起こる確率」という条件付き確率は一般にPA(B)またはP(B|A)と表現され、下図右に示す関係式が成立します(ベイズの定理)。この式が成り立つ理由は下図左側のベン図を見るとより分かりやすいと思います。

 逆に言えば条件付き確率に関して覚えておくべきはこの等式だけであり、他の確率問題と比べて特に難しい訳ではありません。今回は条件付き確率の分野から、新型コロナウィルスの流行で非常にタイムリーな話題となった、医療検査の精度に関連した問題を2つほど紹介します。

佐賀大学 (2020年)

 
 最初に紹介するのは今年の佐賀大学で出題された問題で、医療検査に関する確率問題の基本形とも言うべき内容になっています。

 ある病原菌に対する感染を確認する検査を考える場合、感染個体に対して100%陽性反応が出て、非感染個体には100%陰性反応が出ることが理想です。しかし現実の検査では理想通りとはいかず、非感染個体に対して陽性反応が出たり(偽陽性)、逆に感染個体に対して陰性反応(偽陰性)が出る可能性が有ることが実情です。

 条件付き確率を利用する事で、例えばある個体に陽性反応が出たとき実際にどの程度の確率で実際に病原菌に感染しているかを議論することが出来ます。本問の場合偽陽性を示す確率が1%で偽陰性を示す確率が3%なので、一見するとそれなりに正確な検査のように思えますが…

(1)及び(2)の解答


(1)は余事象に関する基本問題です。「感染個体に対して陽性反応を示す(真陽性)」は「感染個体に対して陰性反応を示す(偽陰性)」の余事象に当たるため、引き算一つで解決します。

(2)では検査個体における真の感染個体の割合を考えます。問題文より検査個体の4%が陽性反応を示しますが、この中には真陽性個体と偽陽性個体が混在しています。そこで、真の感染個体の割合をpとおいて真陽性と偽陽性の確率をそれぞれpで表現することで、1次方程式の問題に帰着されます。

(3)の解答


 (3)でいよいよ条件付き確率が登場します。とはいえ前問までの段階で殆どお膳立ては終わっており、本問ではベイズの定理に従い偽陽性を示す確率(= P(A∩B))を陽性反応を示す確率(= P(A))で割ってあげるだけです。

 検査で偽陽性が出る確率は僅かに1%ですが、条件付き確率を利用する事で陽性個体のうちおよそ24%が偽陽性である事が分かります。一見不可解な結論にも見えますが、これは実際の非感染個体が感染個体に比べて非常に多いため、僅かな偽陽性率であっても相当数の偽陽性個体が生じてしまうことを意味しています。

 偽陽性個体を排除する為の方策として例えば検査を複数回行ったり、別の検査や問診などを組み合わせるなどの対応が取られます。

旭川医科大学 (2018年)


 続いては2018年の旭川医科大からの出題です。医学系単科大学ということで状況設定は前問より複雑になっていますが、考え方は余り変わりません。

(1)の解答


 問題文より「腫瘍Xを持たない」「良性の腫瘍Xを持つ」「悪性の腫瘍Xを持つ」という3種類の個体が存在し、それぞれの存在割合は97%, 2%, 1%であることが分かります。あとはそれぞれの個体について検査Yに対して陽性反応を示す確率を計算し、合計するだけです。

(2)の解答

 前問の結果から「ある個体に腫瘍Xがあると判定される確率(= P(A))」と「ある個体が悪性の腫瘍Xを持っており、更に腫瘍Xがあると判定される確率(= P(A∩B))」は既に求めている為、あとはベイズの定理に従って条件付き確率を計算するのみです。

 本問の結果から検査Yで腫瘍Xがあると判定された段階で、その個体が悪性の腫瘍Xを持っている確率は約7.8%という事になります。なお、同様に計算を行うと良性の腫瘍Xを持つ確率は約13%、腫瘍Xを持たない確率が約79%であり、この段階で腫瘍Xを持つと結論付ける事は時期尚早と言えそうです。

(3)の解答


 (2)と同様に条件付き確率をベイズの定理を利用して計算します。「ある個体が悪性の腫瘍Xを実際に持たない確率(= P(C))」は問題文よりすぐに分かりますが、「ある個体が悪性の腫瘍Xを実際に持たず、検査の結果腫瘍Xが無いと判定される確率(= P(C∩D))」については、個体が腫瘍X自体を持たない場合と良性の腫瘍Xを持つ場合を別々に考えて足し合わせる必要があります。

 本問の結果から悪性の腫瘍Xを持たないならば9割弱の確率で検査Yに引っ掛からないことが分かります。

コメント

 医療検査に関する条件付き確率はある程度出題パターンが決まっており、落ち着いて考えれば決して難しくはありません。今年は世相を反映してこのようなタイプの問題が多く出題されるかもしれないので、目を通しておいて損はないはずです。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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