ビタミンと疾病の歴史 (2012年 東京慈恵会医科大)


 医学部らしいビタミンの歴史と疾病を題材としており、前半はビタミンB1とその欠乏症である脚気に関する内容、後半は葉酸とサルファ剤の歴史に関する内容となっています。なお本問で取り上げられている高木兼寛は東京慈恵会医科大の創設者であり、そういった意味では独自色の強い問題と言えるかもしれません。

なお原子量として H = 1, C = 12, N = 14, O = 16が提示されています。

解答

問1: x = 25 (詳細は以下)

 グルコース及びグリシンの分子式はそれぞれC6H12O6 及びC2H5NO2 であるので、それらが脱水縮合して得られるデンプン及びタンパク質の分子量は重合度をnとすると、(C6H10O5)n 及び (C2H3NO)n で与えられます(重合度が十分大きいとされているので、末端部分は無視可能)。従って白米100gに含まれる炭素及び窒素原子の質量は以下の通り計算することが可能です。

 従って両者の質量比は x = 36.7/1.47 = 24.9… ≒ 25と決定されます。正確に計算を遂行しようとすると中々に大変ですが、最終的に整数値で解答すればよく途中経過も記述不要である為、ある程度ざっくりとした計算で十分です。

 結局脚気の原因は食品中における窒素:炭素の質量比ではなく、ビタミンB1の欠乏だった訳であり高木の主張は誤りでした。しかし彼が仮説に基づいて推奨した麦飯(白米よりタンパク質含量が多い)にはビタミンB1が豊富に含まれており、結果として脚気の発生率を大幅に引き下げ、疫学的に重要な知見を与えました。

問2: 下図参照

 付加反応産物である双性イオンとピルビン酸の構造を比較すると、構造式7のうち赤色で示した箇所がピルビン酸に由来すると予測できます。従って残りの青色で示した部分がトリメチルチアゾリウムに由来する事になり、陽イオンであることを踏まえて下図に示す構造式を得ます。


 見慣れない構造式が並んだ上に、馴染みの薄いカルボニルへの付加反応が問われていることもあり、取っつきづらいと感じた受験生も多いのではないかと思います。

 なおチアミンは右に示す構造式を持ちATP生合成に必須ですが、これ自身がATPの原料となる訳ではなくATP生合成酵素の補酵素として作用します。従って他のビタミン類同様欠乏すれば重篤な疾病に繋がりますが、要求量はきわめて微量です。

問3: サルファ

 医薬品に関する知識問題であり、医学部受験者であれば抑えておきたい所です。ドーマクは染料であったプロントジルが感染症治療に有効であることを発見した功績により、後にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

問4: 下図参照

 問題文からプロントジルはm-フェニレンジアミンと化合物Cのジアゾカップリングにより合成されることが分かります。各構造式は見慣れないものですが、フェノールとアニリンにおけるジアゾカップリングと同様に進行すると考えれば、生成物ともう一方の原料の構造から逆算する形で、化合物Cの構造は以下の通り決定されます。

 
 続いて、化合物E及びGの手がかりは問題文最後の段落に全て記載されています。化合物Eはトルエンから以下の3つのステップを経て合成されます。いずれもセンター試験レベルの反応であり、得られる化合物も極めて単純である為落とせません。

 なお、最終産物である化合物E(4-アミノ安息香酸)は葉酸の生合成前駆体であり、かつてはビタミンの一種とされていました。しかしその後、ヒトでは必須栄養素では無いことが明らかとなり除外されています。

コメント

 問1は考え方は難しくありませんが計算がやや煩雑で、問2は見慣れない構造式と反応機構を考察する必要があったため歯ごたえがありますが、後半二問は基本的な知識や化学反応を問う内容であり、本学受験者であれば落とせません。前半二問をいかに効率よく処理できたかで差がついたのではないかと思われます。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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