ミョウバンの化学 (2018年 東京慈恵会医科大学)

 ミョウバンは食品添加物など幅広い用途がありますが、小学校の理科の教科書で初めてその存在を知った人も多いのではないでしょうか。

 再結晶や溶解度の問題では食塩と並んで登場機会が多いミョウバンですが、高校の無機化学分野においては些か影が薄いイメージです。本問はそんなミョウバンにスポットライトを当てた総合問題となっています。

 なお、原子量及び気体定数は以下の通りとします。

H = 1.0 C = 12.0 O = 16.0 Al = 27.0 S = 32.0 K = 39.0 
R = 8.31 x 103 L・Pa・mol-1・K-1

解答

問1: (ア) 両性 (イ) (カリウム)ミョウバン

 いずれも基本的な知識問題です。但し本来「ミョウバン」は1価の陽イオンの硫酸塩と3価の陽イオンの硫酸塩による複塩全般を指す名称であり、硫酸アルミニウムカリウムは数あるミョウバンのうちの1種類に過ぎません。
 
 他のミョウバン類との混同を避ける為、硫酸アルミニウムカリウムを指して「カリウムミョウバン」と呼ぶ事もあるようですが、本問についてはミョウバンと解答しても正答扱いになると思われます。

問2-(1): Al(OH)3 + 3HCl → AlCl3 + 3H2O
問2-(2): Al(OH)3 + NaOH → Na[Al(OH)4]

 両性水酸化物に関する基本的な化学反応を問う内容です。酸との反応は通常の水酸化物と同様に単純な中和反応の式となりますが、塩基との反応ではアルミニウムがテトラヒドロキシアルミン酸イオンとなり、ナトリウムとアルミン酸塩を形成します。

問3: n = 6

 ハイドロサルタイトの組成式を知っている受験生は皆無と思われますが、各種イオンが塩を形成する場合その電荷は釣り合うはずです。水和水を除いたマグネシウム、アルミニウム、炭酸、水酸化物イオンの電荷はそれぞれ+2, +3, -2, -1となるので、正負の電荷が釣り合うように方程式を立てると

2n + 3(8-n) = 2 + 16 ⇔ n = 6

 となり、n = 6を解として得ます。

問4: Al2(SO4)3 + K2SO4 + 24H2O → 2AlK(SO4)2・12H2O

 いわゆるミョウバンこと硫酸アルミニウムカリウムの形成反応です。最終産物である硫酸アルミニウムカリウムの組成式さえ把握していれば簡単ですが、水和水の存在を忘れないように注意が必要です。

問5: 複塩

 本問も問1と同じく基本的な知識問題です。硫酸アルミニウムカリウムは大学入試で登場する最も代表的な複塩で、他にはフェーリング液に含まれる酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられます。

問6: AlK(SO4)2・3H2O

 与えられた原子量から硫酸アルミニウムカリウムの無水物及び十二水和物の式量はそれぞれ474及び258で与えられます。問題文から64.5℃で生じる化合物は十二水和物から水和水が一部失われたものなので、その組成式をAlK(SO4)2・nH2Oと置けば式量は258+18nで与えられます。

 これが元の質量の65.8%であることから 「(258+18n)/474 = 0.658」と方程式を立て、n≒3が得られます。

問7: 三酸化硫黄 問8: 2AlK(SO4)2 → Al2O3 + K2SO4 + 3SO3

 問題文より温度を上げると更に水和水が失われ、258/474 ≒ 0.544…から200℃の時点で硫酸アルミニウムカリウムは全て無水物になったと考えられます。

 そして更に温度を上げることで熱分解が起こり、硫酸アルミニウムカリウムは気体Aを放出しながら酸化アルミニウム及び硫酸カリウムとなります。本反応を知っている受験生は殆どいないと思いますが、2単位のAlK(SO4)2から1単位のAl2O3とK2SO4が生じると考えて原子を差し引くと、S3O9が残ります。

 従って生じる気体Aは三酸化硫黄(SO3)と考えられ、問題文で提示されている質量減少に関する記述とも矛盾はありません。生じる気体が分かってしまえば反応式を記述するのは容易です。

問9: 2.7 x 103 L

 式量から948 gのAlK(SO4)2・12H2Oは物質量換算で2 molとなります。これを加熱してゆくとまず200℃までに総計24 molの水和水が失われ、その後の熱分解で更に3 molの三酸化硫黄が生じます。

 950℃の高温条件では水は全て気体になっていると考えて問題はないため(問題文にも飽和水蒸気圧に関する記述はありません)、948gのAlK(SO4)2・12H2Oから最終的に27 molの気体(理想気体)が生じる事になります。気体の状態方程式PV = nRTのうちP, T, Rは問題文で与えられており、nは先程決定した為各々代入計算を行うことで V ≒ 2.7 x 103 Lと決定されます。

 問8が出来ていれば後は単純な計算問題…、と言いたい所ですが水和水の存在は非常に失念しやすく、正答率はかなり悪かったのではないかと思います。

コメント

 ミョウバンに関する話題を主軸として知識、計算、思考問題が程良く融合されていますが、問6までは標準的レベルであり時間をかけずに完答したい所です。

 問7及び問8は三酸化硫黄の生成を反応物と生成物の組成式を差し引いて推測する必要がある為思考力を要し、問9は計算自体は標準的ながら水和水の存在を忘れやすいため、主に後半部分の出来で差が付いたものと思われます。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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