実は国際数学五輪級? (2020年 富山大・工)

 
 今年の富山大学工学部から不等式証明の問題です。最終的な目標である(3)の不等式はかなり難解な形をしていますが、(1)及び(2)が誘導になっている事は明白です。ところで自分は(3)の不等式に強烈な既視感があり少し調べてみたのですが…

(1)の解答


 大学入試では超頻出の式変形及び不等式証明です。もし初見であるようならば、この結論に関しては覚えてしまっても良いでしょう。

(2)の解答


 不等式証明の定石に従い、与えられた両辺の差を取って考えます。2つの分数式を通分計算しますが、分子に関してはa3-1を共通因数に持つことに注意します。後は分子について因数分解を行うことで「(左辺)-(右辺)≧0」が成り立ちます。但し a, b, c > 0であることについて言及しなかった場合、大幅な減点は免れません。

 ここで得られた不等式が(3)に対する強力なヒントとなっています。

(3)の解答


 そのまま通分計算を開始すると手の施しようがなくなってしまいますが、「前問の結果を利用する」という意識を持てば、左辺の第一項について(2)の結論が適用出来ることにすぐ気が付くでしょう。また式の対称性を考えると(2)の結論から第二項及び第三項についても同様の不等式が成り立ち、結果として通分計算が容易になります。

 通分後は分子について「a, b, c が abc≧1を満たす正の実数」という条件に注意しながら式変形を行い、最後に(1)の結果を適用することで(左辺)≧0が示されます。2つの式を不等号で結ぶ場合、その根拠を明確に示すことが減点を防ぐうえで非常に重要です。

コメント

 一見複雑に見える不等式も、適切な誘導さえついていれば無理なく証明できるという事を示すお手本のような問題です。(3)を解くうえで(1)及び(2)がなぜ必要なのかと常に考えておくことが大切です。

余談: 第46回国際数学オリンピック 第3問

 国際数学オリンピック(IMO)は通常2日間の日程で行われ、両日とも3つの大問を4時間30分の制限時間内で解答するものです。即ち一問あたりの解答時間は実に1時間30分にも及び、問題のレベルは難度の差はあれどいずれも最高峰クラスです。

 
 ところで上の不等式証明は2005年にメキシコのメリダで開催された第46回IMOで出題されたものですが、条件設定を含めて今年の富山大の問題と非常に似ていることに気が付きました。そこで、本問と同様のアプローチを試してみます。

 細部は異なりますが殆ど同じ流れによって、与えられた不等式を証明出来てしまいます(等号成立条件も x = y = z = 1で同じ)。

 要は適切な誘導さえ提示されれば、IMOの問題であろうと大学入試レベルに落とし込めるという事なのですが、そこはまさに「コロンブスの卵」。こうした不等式を誘導無しで証明してしまうIMO受験者層のレベルに感嘆するばかりです。

 

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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