シリカゲルの表面積を求める (京都大学 2011年)


 シリカゲルは乾燥剤、消臭剤、クロマトグラフィーの担体など様々な用途で使用されますが、これはシリカゲルが有する多孔質構造に起因します。すなわちシリカゲルは拡大するとスポンジのような「穴ぼこだらけ」の構造をしており、一般的な物質と比べて非常に大きな表面積を持ちます。これによりシリカゲルは非常に効率よく水分やにおい成分等を保持することが可能になります。

 本問では直接的に求めることが困難であるシリカゲルの表面積を、理論式と実験結果を組み合わせることで見積もります。

文(a) 及び各種定数

 
 文(a)及び問1では多孔質物質の表面積を実験的に決定する為の理論式を求めます。本問の最終的な結果である式(4)は後半の問題を解答する上で必要となります。

問1: 以下参照


 文章の指示通りに立式・式変形を行えばそれほど難しくはないのですが、受験生にとってなじみが薄いテーマで文章量も多いためそれなりに時間がかかる事と予想されます。先にも述べた通り、本問における最終的な結論(式(4))を最後の問題で利用する為、多少時間をかけてでも完答したい所です。

文(b)


 本問の後半部分ではシリカゲルにおける吸着点の総数(N0)及び表面積を、前半で導出した関係式を利用しつつ決定します。

 式(4)よりN0を求める為に必要なパラメータは2つの異なる圧力条件(P1、P2)に対する、気体分子の吸着量(N1, N2)となります。圧力は実験者が適宜定めることが出来ますが、気体分子の吸着量を求める為には実験系の工夫が必要になります。

問2: 25 ml (または 2.5 x 101 ml、計算は以下)


 気体分子の吸着に関する実験を行う前に、弁Aで接続された2つの容器に対してそれぞれの体積を求める必要があります。容器IIの容積は50 mlとあらかじめ分かっていますが、容器Iに関しては容器I本来の体積から導入したシリカゲルの体積を差し引いた値を有効体積として求める必要があります。

 問題文にもある通り窒素ガスを導入するとシリカゲルに対する吸着が起こる為、有効体積を正確に求めることが出来ません。そこで、シリカゲルに対する吸着が起こらないヘリウムガスを利用する必要があります。

 以降の問題を解くためにも、実験の背景や操作に関する問題文をしっかり読み込む必要はありますが、本問に限れば気体分野に関する基本的な計算問題です。利用するのはボイルの法則のみで、計算も非常に易しい為絶対に得点しておきたい所です。

問3: 3.0 x 10-4 mol (計算は以下)

 弁Aを開けると窒素分子の一部が容器I内でシリカゲルに吸着されるため、シリカゲル外における窒素分子の物質量は開放前と比べて減少しているはずです。開放前後の物質量はいずれも気体の状態方程式から求めることが可能であり、両者の差がシリカゲルに対する吸着量となります。

 これにより、N0の決定に必要なパラメータの1つ (P1, N1) = (8.0 x 103, 3.0 x 10-4) を得ることが出来ます。

 少々計算は面倒ですが、問題文を読んで実験の意図が正確に理解できればそれほど難しくはありません。なお、ここまでは問1の結果を利用せずに解答可能です。

問4: 7.2 x 102 m2 (計算は以下)


 問3及び実験3の結果から、N0の決定に必要なもう1つのパラメータである (P2, N2) = (1.6 x 103, 1.0 x 10-4) が得られます。これらを問1で求めた式(4)に代入することで、N0の値をmol単位で決定する事が出来ます。

 ここまで来ればあとは単純計算であり、他の実験結果及びアボガドロ定数から1gあたりの表面積が分かります。720 m2は実に畳約400枚分に相当し、シリカゲルなどの多孔質物質がいかに効率よく各種分子を吸着出来るかを示しています。

 本問自体は単純計算のみで解決するので簡単ですが、問1~問3までを完答していないと正答に辿り着くことが実質的に不可能です。この大問における集大成とも言うべき問題であり、ここまで来たのであれば是非完答したい問題です。

コメント

 見慣れない設定で文章量もかなり多いですが、一つ一つ丁寧に噛み砕いていくとそれ程難しい事は述べられておらず、計算自体も大変にならないように工夫されている印象です。総評すると化学選択の京大受験生であれば、計算ミスさえしなければ満点も狙える内容と言えます。

 とはいえ入試本番という特殊な環境の中で長い問題文の意図を理解し、ミスに気を付けながら計算を進める事はそれ程容易では無く、それなりの解答時間は覚悟せざるを得ません。結局、本番では試験時間や得意分野と相談しながら解き進める事となります。

 とはいえ全く手を付けない訳にもいかないので、比較的短時間で結論を出せる問1及び問2あたりまでは完答しておきたい所です。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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