コーシー・シュワルツの不等式とは
コーシー・シュワルツの不等式は元々ベクトルの内積に関して与えられた定理であり、n次元ベクトル空間(n個の成分から構成される)に属する2つのベクトル u, v に対して以下の通り与えられます。
(uとvの内積)2 ≦ (uの絶対値)2 ・(vの絶対値)2
この不等式はu, vの成分が実数、複素数いずれの場合も成立しますが、今回は実数に限定して考えます。このときu, vの内積及び絶対値は一般のnに対して以下の通り定まります(実は内積の定義はこれ以外にも幾つか存在するのですが、高校数学の範囲を超えるので割愛)。

これを先の不等式に当てはめることで、ベクトル成分に対する以下の不等式を導くことができます。
等号成立条件はuとvの少なくとも一方が零ベクトルであるか、uとvが共に零ベクトルでは無く且つ平行である時となります(x1: x2: … : xn = y1: y2: … yn)。大学入試界隈ではこちらを指してコーシー・シュワルツの不等式と呼ぶことが多く、例えば、n = 2及び3の場合は以下のように表現されます。
コーシー・シュワルツの不等式の利用 (2007年 早稲田大・人間科学)

上の問題を真正面から解こうとする場合、xを消去して2変数関数の最小問題として捉える解法や、x + 2y + 3z = 7を平面の方程式と捉える幾何的な解法が考えられますが、いずれもそれなりに時間を要します。
実はこの問題、コーシー・シュワルツの不等式を知っていれば驚くほどあっさりと解くことが出来ます。
解答

このようにコーシー・シュワルツの不等式を用いるだけで、大した計算も必要とせず解決してしまいます。等号成立条件の表現を見るに、大学側もコーシー・シュワルツの不等式の利用を念頭に置いているようにも感じます。
別解

今回のような短答式問題では特に問題とはなりませんが、コーシー・シュワルツの不等式は高校の教科書では登場しない為、記述式問題の場合は証明無しで利用すると減点のリスクが付きまといます(大学側の採点基準は不明瞭)。
そうした場合は、上記のようにベクトルの内積を利用した解法が有効です。こちらの解答も最初の解答と本質的には同じなのですが、コーシー・シュワルツの不等式の名前を出す必要が無いため、減点される恐れはありません。
コメント
コーシー・シュワルツの不等式に関する情報の有無が難易度に直結する為、ある意味では知識問題と言えるかもしれません。とはいえ大学入試では常に時間不足に陥りがちなため、覚えておいて損はありません。