
二つの変数が絡んだ一見して複雑な不等式の証明問題です。文理共通問題であることから微分など数III絡みの知識は不要であり、あくまで式変形によって不等式を証明する為の力量が問われます。
解答
|x| ≦ 1 及び |y| ≦ 1という範囲から、x = cosα y = cosβ (0 ≦ α ≦ π、0 ≦ β ≦ π)と置くが可能です。そこで問題文の不等式における真ん中の多項式をPと置き、x, y をα, βの式で表現します。
P = cos2α + cos2β – 2cos2αcos2β + 2cosαcosβsinαsinβ
これにより不等式中に含まれていた2つの根号√1-x2 及び √1-y2をsinα、sinβと書き換える事が可能になり、式の見通しが非常に良くなります。√1-x2 のような形の式が登場した場合、今回のように三角比を導入すると式の形が綺麗になる場合は多く、覚えておいて損はありません。
但しこのままでは最終的な目標である「0≦P≦1」示すことは出来ない為、更なる式変形が必要となります。
P = cos2α + cos2β – 2cos2αcos2β + 2cosαcosβsinαsinβ
= (cos2α-cos2αcos2β)+(cos2β-cos2αcos2β)+2cosαcosβsinαsinβ
= cos2α(1-cos2β)+cos2β(1-cos2α)+2cosαcosβsinαsinβ
= cos2αsin2β + sin2αcos2β + 2cosαcosβsinαsinβ
= (cosαsinβ + sinαcosβ)2
= sin2(α + β)
三角比の相互関係と加法定理利用する事で、最終的に「P = sin2(α + β)」という非常に簡潔な関係式が得られます。答えを見てしまえば至極最もな式変形なのですが、ノーヒントで行うにはなかなか大変で、特に一行目から二行目の流れは思いつくのに時間を要した人(あるいは到達できなかった)が大部分と思われます。
ここまで来てしまえば示すべき結論はほぼ自明であり、0 ≦ α + β ≦ 2πであるから示すべき結論を以下の通り導くことが出来ます。
0 ≦ sin2(α + β) ≦ 1 ⇔ 0 ≦ P ≦ 1
等号成立条件について特に答える必要はありませんが、左側の等号はα + βが0, π, 2πの時に、右側の等号はα + βがπ/2または3π/2の時に成立します。
コメント
誘導などは一切存在しない為、証明における道筋を全て自分で立てる必要があります。少なくとも三角比を導入する部分までは思いついて欲しい内容であり、理系受験者であれば時間をかけてでも完答したい所です。
幸いなことに阪大数学は文理共に1問あたり30分の試験時間が与えられている為、考える時間は十分にあります。勿論上記の式変形をすぐに思いつくことが出来れば、時間的に他の受験生と差を付けることも可能です。
なお、x = sinα, y = sinβ と置くことによってもほぼ同様の証明が可能ですが、(x, y)と(sinα, sinβ)を一対一対応させるために定義域は 「|α| ≦ π/2, |β| ≦ π/2」と定める必要があります。