式の形にヒントは潜む (2013年 JMO予選 第四問)


 与えられた多項式を展開して各々の係数を直接求める事も出来ますが、計算量は膨大で計算ミスのリスクも高く、JMOの趣旨を考えればそれは「最後の手段」と考えるべきでしょう。

 各々の係数そのものではなく係数の和が問われている意味を熟考する事で、本問に対する適切な方針が見えてきます。

解答

 問題文におけるa0~a9の定義から、多項式について以下の(式1)が成立します。

(x+1)3(x+2)3(x+3)3 = a0+a1x+a2x2+a3x3+….+a8x8+a9x9 (式1)

 そして(式1)の両辺にそれぞれx = 1, -1, 0を代入する事でa0~a9に関する以下の関係式(式2~式4)を得る事が出来ます。

23・33・43 = a0+a1+a2+a3+….+a8+a9 (式2)
0 = a0-a1+a2-a3+….+a8-a9 (式3)
23・33 = a0 (式4)

 このうち式2と式3を辺々足し合わせる事で、奇数番目の係数(a1, a3, a5, a7, a9)が打ち消され、偶数番目の係数に関する(式5)が導かれます。

23・33・43 = 2(a0+a2+a4+a6+a8) ⇔ 22・33・43 = a0+a2+a4+a6+a8 (式5)

 更に(式4)からa0の値は具体的に与えられている為、結局答えるべき式の値は以下の通り求める事が出来ます。

a2+a4+a6+a8 = 22・33・43 – 23・33 = … = 6696

コメント

 ある多項式について因数分解形と展開形に関する恒等式が与えられた場合、そこに適切な値を代入する事で有用な関係式を得られる場合があります。

 例えば二項係数に関する恒等式(式6, 但しnは非負整数)にx = 1を代入する事で、2の累乗と二項係数における有名な関係式(式7)が導かれ、これは大学入試においても頻出します。

(x+1)n = nC0+nC1x+nC2x2+…nCn-1xn-1+nCnxn (式6)
2n = nC0+nC1+nC2+…nCn-1+nCn (式7)

 本問も同様の考え方に基づいたものですが、結論を得る為には複数の値を代入しなければならなかった為難易度はより高めです。とはいえ、予選通過を目指す受験生であれば何としても得点しておきたい内容と言えます。

 

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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