
正四面体の隣り合う二点間で電流が流れるか否かという趣旨の問題です。電流と言われると少し特殊な雰囲気が漂いますが、実質的には道路の通行止め問題と同じように考える事が可能です。
(1)の解答
①辺ABが電流を通す場合
残りの辺が電気を通すか否かに関わらず、AからBへは電流は流れる。このような事象は確率pで発生する。
②辺ABが電流を通さない場合
辺AB間に直接電流が流れないので、AB以外の辺を迂回する必要がある。これは以下の図に対してAからBへ電流が流れる確率と等しい。
(A): ①~⑤のうち電流を通す辺の数が1以下の場合
AからBに電流が流れることは無い。
(B): ①~⑤のうち丁度2つの辺が電流を通す場合
①と④または②と⑤が電気を通すときに限りAからBへ電流が流れる。2つの事象は同様に確からしくp2(1-p)3の確率で起こる為、合計すると2p2(1-p)3
(C): ①~⑤のうち丁度3つの辺が電流を通す場合
電流を通す辺の選び方は5C3 = 10通りで、このうちAからBに電流が流れるのは①②③または③④⑤が電気を通す場合を除いた8通りである。各事象は同様に確からしく、それぞれが起こる確率はp3(1-p)2であるので合計すると8p3(1-p)2
(D): ①~⑤のうち丁度4つの辺が電流を通す場合
電流を通す辺の選び方は5C4 = 5通りであり、いずれの場合もAからBへ電流が流れる。各事象は同様に確からしく確率p4(1-p)で発生するので、各事象について合計すると5p4(1-p)。
(E): ①~⑤全てが電流を流す場合
この時AからBへ電流が流れ、起こる確率はp5である。
従って上の経路においてAからBに電流が流れる確率は、(B)~(E)のパターンで電流が流れる確率を全て足し上げる事により、以下の通り与えられる。
2p2(1-p)3+8p3(1-p)2+8p3(1-p)2+p5 = 2p5-5p4+2p3+2p2
辺ABが電流を流さない確率は1-pなので、②のケースでAからBへと電流が流れる確率は(1-p)(2p5-5p4+2p3+2p2)と計算される。
最後に①と②の場合を足し合わせる事で、AからBへと電流が流れる確率を以下の通り計算することが出来る。
(1-p)(2p5-5p4+2p3+2p2)+p = -2p6+7p5-7p4+2p2+p
辺ABが電流を通す場合は特に問題ありませんが、辺ABが電流を通さない場合は残りの辺に関する場合分けが生じます。その際、与えられた経路を二次元的に”押し広げる”ことで見通しが良くなります。
今回は電流を通す辺の個数によって場合分けを行いましたが、その他にも辺CD(③)が電流を通すか否かで場合分けする解法も存在します。
余事象を考え、先の図においてAからBに電流が流れない事象を考える事も出来ますが、25 = 32通りのうちAからBへと電流が流れる場合も、流れない場合も共に16通りなので手間は殆ど一緒です。
(2)の解答
頂点BからFへ電流が流れる為には「B→A(E)→F」と電流が流れる必要がある。これが成り立つのは「BからA(E)へ電流が流れ」かつ「A(E)からFへ電流が流れる」時であり、これらの事象は互いに独立である。
また(1)の結論からいずれの事象が起こる確率も-2p6+7p5-7p4+2p2+pで与えられるため、頂点BからFへ電流が流れる確率は(2p6+7p5-7p4+2p2+p)2となる。
2つの四面体が面や辺を共有する場合は場合分けが一気に複雑になりますが、1つの頂点のみを共有しているのであれば、(1)で行った議論を2回繰り返すだけです。(1)が出来た受験生に取ってはサービス問題と言える内容で、取りこぼしは厳禁です。
コメント
策を色々と弄するよりも、丁寧に場合分けを行って数え上げた方が早いタイプの問題です。辺ABが電流を通さない場合についての場合分けは、工夫によって解答時間を短縮する事が可能ですが、試験場ではあれこれ考えているよりは32通り全て調べ上げてしまった方が、結果として早いかもしれません。
落ち着いた環境で解く上では難しさを感じにくい本問ですが、本番では数え上げや多項式計算を注意深く進める必要があり思いのほか時間を取られます。最終的な答えも余り綺麗ではない為、答えに確信を持ちづらい点も嫌らしさに拍車をかけています。
ちなみに同年の文系ではp=1/2とした場合が出題されています。注意深く数え上げる必要があることは理系と同じですが、以降の計算はずっと楽なものになっています。