
いかにも何か背景がありそうな問題ですが一旦それは置いておきます。手元にパソコンや関数電卓があれば左辺の各項を足し合わせて5乗根を計算するだけなのですが、当然ながら試験場でそのような解法は許されません。
従って頼りになるのは筆記用具と己の頭脳という事になりますが、本問を解くにあたって重要になるのは計算機のような厳密な計算ではなく、大雑把にnの候補を絞り込む姿勢となります。
解答
k及びk5の1の位が一致する事は05~95における1の位を具体的に求める事で確認出来ます(k5-kが10の倍数である事を示しても良い)。
上記の解答では言及していませんが「1335>>1105>>845>>275」というざっくりした感覚から「nは133より”少しだけ”大きな自然数」という予想を立てています。ノーヒントであれば134, 135, 136…と順番に吟味する所ですが、nの1の位が分かることで134, 144, 154…と候補を絞り込むことが出来ます。本問に対するアプローチは色々と考えられますが、1の位を予め求めておくことはほぼ必須事項と言って良いでしょう。
この時点で各候補について吟味する事も可能ですが、その場合は左辺が1345より大きく1545より小さい事を示す必要が有るため、より厳密な不等式評価が要求されます。そこで今回の解答では左辺が3の倍数であることに着目してn=134, 154, 164の可能性を予め排除しておき、評価が比較的簡単なn=174の場合について議論しています。
なお等式はn=144において確かに成立し、その値は61917364224となります。1の位からnをある程度絞り込めた後は、力技で代入計算してしまうのも一つの手かもしれません。
コメント
一見すると単なる計算問題のようにも見えますが、nの候補を絞り込む為には整数問題に対するセンスが重要となります。特に等式の1の位に着目する考え方は他の問題でも応用が利き易いので頭の片隅に留めておくと良いでしょう。
本問の背景: オイラー予想
いかにも意味ありげな本問の等式ですが、実は「オイラー予想」と呼ばれる有名なトピックに深く関係しています。
オイラー予想とは18世紀の数学者レオンハルト・オイラーが提唱したフェルマーの最終定理の拡張版とも言える予想で、その内容は「n > 3の時、n − 1 個の n 乗数の和を1個の n 乗数で表すことはできない」というものです。すなわちa, b, c, d, e, f, …を自然数として以下の等式を満たす解は存在しないという予想でありました(フェルマーの最終定理から、n = 3の場合は解を持たないことが担保される)。
この予想に対する反例は長らく見つかりませんでしたが、1966年にLander及びParkinの研究グループが n = 5の場合に関する反例を報告しました。彼らの研究は当時最新鋭であったスーパーコンピュータ(CDC 6600)を使って行われ、論文自体はA4半分にも満たない非常にシンプルなものです。
そして彼らが提示したオイラー予想に対する初の反例こそが冒頭の等式に繋がっています。その後はコンピュータの発達などもあってn = 4の場合も反例が見つかるなど、現在においてオイラー予想は否定的に解決されています。