有名公式に頼るべし② (1998年 JMO予選 第10問)

 \(x,y,z\)が正の実数を動くとき \(\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6}\) の最大値を求めよ。


 一般的な多変数関数の最大最小を議論する為には大学で学ぶ解析学の知識が必要となりますが、中高生を対象としたJMO予選においてそのような手法を用いる事は想定されておらず、それ以前に1変数の微積分に関しても(建前上は)範囲外となっています。

 従って本問は純粋な数式処理により最大値を導くことが出来るはずなのですが、その為にはある有名公式の力を借りる必要があります。

解答

\(A=\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6},~~~~ a=\displaystyle\frac{x^6}{x^6+y^6+z^6}\)

\(b=\displaystyle\frac{y^6}{x^6+y^6+z^6},~~~~ c=\displaystyle\frac{z
^6}{x^6+y^6+z^6}\)


 と定めると \(A,a,b,c\)は以下の式(1)及び(2)を満たす。

\(a+b+c=1\tag{1}\)

\(A=a^{\frac{1}{2}}b^{\frac{1}{3}}c^{\frac{1}{6}}~~\Leftrightarrow~~A^6=a^3b^2c\tag{2}\)

 \(A,a,b,c\) は正の実数であるので相加相乗平均の不等式及び式(2)より

\(a+b+c=\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{b}{2}+\displaystyle\frac{b}{2}+c\geq6\sqrt[6]{\left(\displaystyle\frac{a}{3}\right)^3\left(\displaystyle\frac{b}{2}\right)^2c}\)

\(\Leftrightarrow~~a+b+c\geq6\sqrt[6]{\displaystyle\frac{a^3b^2c}{108}}=6\sqrt[6]{\displaystyle\frac{A^6}{108}}=\displaystyle\frac{6A}{\sqrt[6]{108}}\)

\(\Leftrightarrow~~A\leq\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}(a+b+c)\)

 が成り立つ。この不等式に式(1)を代入する事で以下の不等式(3)を得る。

\(A\leq\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}\tag{3}\)

 相加相乗平均の不等式における等号成立条件より不等式(3)の等号成立条件は

\(\displaystyle\frac{a}{3}=\displaystyle\frac{b}{2}=c\)

 であるが式(1)よりこれは\((a,b,c)=\left(\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{1}{3}\displaystyle\frac{1}{6}\right)\)の時成立する。このような\(a,b,c\)を与える\(x,y,z\)の条件は

\(x^6:y^6:z^6=3:2:1\tag{4}\)

 \((4)\)を満たす\(x,y,z\)は無数に存在し、例えば\((x,y,z)=(\sqrt[6]{3},\sqrt[6]{2},1)\)は条件を満たす。従って不等式\((3)\)における等号を与える\(x,y,z\)の組は確かに存在するので、\(A=\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6}\)の最大値は\(\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}\)である。

コメント

 本問を解く上でカギとなるのは以下に示す相加相乗平均の不等式となります(\(x_1,x_2,…x_n\)はいずれも負でない実数であり、等号は\(x_1,x_2,…x_n\)が全て等しいときにのみ成立する)。

{\frac  {x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{n}}{n}}\geq {\sqrt[ {n}]{x_{1}\cdot x_{2}\cdots x_{n}}}\,,


 この不等式自体は大学入試等でも頻出であり殆どの受験者は知っていたと思われますが、今回与えられた関数の形から相加相乗の利用を思いつくのはかなり大変です。

 自分の場合JMO予選ということで最初から微分による解法を放棄し、何とか相加相乗に持ち込めないかと苦慮した結果上記のような解答に行き着きました。他にも別解があるような気がしますが、自分で見つける事はついに叶いませんでした。


 

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

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