連分数と黄金比 (2018年 大分大・医)


 一見すると二項間漸化式の一般項と極限を求めるだけのありふれた問題に見えますが、与えられた漸化式から式変形により一般項を求める事は厳しいように思われます。

 このような場合小さい \(n\)に対して\(a_n\)の値を具体的に計算して、そこから一般項を予測する事で解決する場合が多いですが、本問の場合はそれでも一筋縄という訳にはいきません。

(1)の解答

初項及び漸化式より\(a_1\) ~ \(a_6\)の値は以下の通りである。

\(a_1=\displaystyle\frac{1}{1}, a_2=\displaystyle\frac{2}{1}, a_3=\displaystyle\frac{3}{2}, a_4=\displaystyle\frac{5}{3}, a_5=\displaystyle\frac{8}{5}, a_6=\displaystyle\frac{13}{8}\)

次に数列 \(\{b_n\}\) を \(b_1=b_2=1, b_{n+2}=b_{n+1}+b_n\) により定めると、\(b_1\) ~ \(b_7\)の値は以下の通りである。

\(b_1=1, b_2=1, b_3=2, b_4=3, b_5=5, b_6=8, b_7=13\)

従って数列 \(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の間に以下の関係式(*)が成り立つ事が推測される。

\(a_n=\displaystyle\frac{b_{n+1}}{b_n}\tag{*}\)

次に関係式(*)が任意の自然数\(n\)に対して成立する事を数学的帰納法により証明する。\(n=1\)の場合は先に記した\(a_1,b_1,b_2\)の値から関係式(*)は成立する。次に \(n=k~(k\geq1)\)の時に関係式(*)が成り立つと仮定すると

\(a_{k+1}=1+\displaystyle\frac{1}{a_k}=1+\displaystyle\frac{b_k}{b_{k+1}}=\displaystyle\frac{b_k+b_{k+1}}{b_{k+1}}=\displaystyle\frac{b_{k+2}}{b_{k+1}}\)

であるから、\(n=k+1\)の時も関係式(*)は成立する。以上より数学的帰納法から任意の自然数\(n\)に対して関係式(*)が成り立つ。

次に二次方程式 \(x^2=x+1\Leftrightarrow x^2-x-1=0\)の異なる2つの実数解をそれぞれ \(\alpha\) 及び \(\beta\) と置くと(\(\alpha>\beta\))

\(\alpha=\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2},~~\beta=\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2},~~ \alpha+\beta=1,~~ \alpha\beta=-1\)

が成り立つことから、数列\(\{b_n\}\)における漸化式に対して

\(b_{n+2}=b_{n+1}+b_n\Leftrightarrow b_{n+2}=(\alpha+\beta)b_{n+1}-\alpha\beta b_n\)

が成り立つ。従って\(b_{n+1}\)及び\(b_n\)の間には以下の2つの等式が成り立つ。

\(b_{n+2}-\alpha b_{n+1}=\beta(b_{n+1}-\alpha b_n)\)
\(\Leftrightarrow b_{n+1}-\alpha b_n={\beta}^{n-1}(b_2-\alpha b_1)={\beta}^{n-1}(1-\alpha)={\beta}^{n} \)

\(b_{n+2}-\beta b_{n+1}=\alpha(b_{n+1}-\beta b_n)\)
\(\Leftrightarrow b_{n+1}-\beta b_n={\alpha}^{n-1}(b_2-\beta b_1)={\alpha}^{n-1}(1-\beta)={\alpha}^{n} \)

上の2式より\(b_{n+1}\)を消去すると\(\{b_n\}\)の一般項は以下の通り。

\((\alpha-\beta)b_n={\alpha}^{n}-{\beta}^{n}\Leftrightarrow b_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}{\alpha-\beta}\)

従って式(*)より数列\(\{a_n\}\)の一般項は以下の通り求める事が出来る。

\(a_n = \displaystyle\frac{b_{n+1}}{b_n} =\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\displaystyle\frac{(\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2})^{n+1}-(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2})^{n+1}}{(\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2})^{n}-(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2})^{n}}\)
\(=\displaystyle\frac{(1+\sqrt{5})^{n+1}-(1-\sqrt{5})^{n+1}}{2\{(1+\sqrt{5})^{n}-(1-\sqrt{5})^{n}\}}\)

\(\{b_n\}\)はいわゆるフィボナッチ数列と呼ばれる非常に有名な数列であり、\(\{a_n\}\)の一般項を予測する為には各項の分子及び分母にフィボナッチ数列の各項が出現する事に気が付く必要があります。この事に気が付いてしまえば\(a_n\)の一般項をフィボナッチ数列により表現する事はそれほど難しくはなく、数学的帰納法による予測の証明も容易です。

その後はフィボナッチ数列の一般項を具体的に計算します。頻出タイプの隣接三項間漸化式である為特製方程式を利用して解くこととなりますが、対応する特製方程式の解がルートを含んだ分数式となる為、一度\(\alpha,~\beta\)と置いて解と係数の関係を利用しつつ文字のまま計算を進めた方が得策です。

結局\(\{a_n\}\)の一般項は対応する漸化式のシンプルさとは裏腹に、非常に複雑な形をしていることが分かります(従って直接一般項を予測する事は不可能)。

(1)の別解

方程式 \(x=1+\displaystyle\frac{1}{x}\Leftrightarrow x^2-x-1=0~\)の異なる2つの実数解をそれぞれ \(\alpha\) 及び \(\beta\) \((\alpha>\beta)\)と置き、数列\(\{c_n\}\)を次のように定義する。

\(c_n=\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}\)

この時 \(\alpha+\beta=1,~\alpha\beta=-1\) に注意すると

\(c_{n+1}=\displaystyle\frac{a_{n+1}-\alpha}{a_{n+1}-\beta}=\displaystyle\frac{1+\displaystyle\frac{1}{a_n}-\alpha}{1+\displaystyle\frac{1}{a_n}-\beta}=\displaystyle\frac{(1-\alpha)a_n+1}{(1-\beta)a_n+1}=\displaystyle\frac{\beta a_n+1}{\alpha a_n+1}\)
\(=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot\displaystyle\frac{a_n+\displaystyle\frac{1}{\alpha}}{a_n+\displaystyle\frac{1}{\beta}}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot c_n\)

であるから数列\(\{c_n\}\)は初項 \(c_1=\displaystyle\frac{1-\alpha}{1-\beta}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\)、公比\(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\)の等比数列である。従って数列\(\{c_n\}\)の定義から数列\(\{a_n\}\)の一般項は以下の通り求める事が出来る。

\(c_n=(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n\Leftrightarrow\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}=(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n\)

\(\Leftrightarrow a_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\cdots=\displaystyle\frac{(1+\sqrt{5})^{n+1}-(1-\sqrt{5})^{n+1}}{2\{(1+\sqrt{5})^{n}-(1-\sqrt{5})^{n}\}}\)

分数絡みの二項間漸化式(一次分数型と呼ばれる)についても特性方程式は存在しており、これが異なる2つの異なる実数解を持つ場合は上記のように\(\{c_n\}\)を定義する事で等比数列の漸化式に帰着させることが可能です。とはいえこのタイプの漸化式は誘導付きで登場する場合が殆どであり(多くの場合\(\{c_n\}\)に対応する数列が初めから与えられている)、誘導無しで解き切ることが出来た人は一握りでしょう。

また今回は別解という事で議論や計算を端折っており、特に\(\{c_n\}\)を定義する際に\(a_n\neq \beta\)を示す必要があります。従って別解においても相応の計算・記述量が要求される事には変わり有りません。

(2)の解答

\(k=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}=\displaystyle\frac{-3+\sqrt{5}}{2}\)とおくと、(1)における議論より

\(a_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n}{1-(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n}=\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot k^n}{1-k^n}\)

が成り立つ。また\(|k|<1\)より\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}k^n=0\)が成り立つので数列\(\{a_n\}\)の極限は以下の通りである。

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot k^n}{1-k^n}=\alpha=\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)

指数関数絡みの極限に関する標準的な問題であり、(1)を突破できた受験生にとってはサービス問題と言えます。\(\{a_n\}\)の一般項を求めずとも特製方程式の解から極限値が\(\alpha\)となる事は推測出来ますが、\(\{a_n\}\)が確かに極限値を持つ事を示すことが出来ない限りはほぼ0点と思われます。

ちなみに与えられた漸化式から\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\)は以下のように連分数表示可能であり、(2)の結論から黄金比\(\tau\)に一致する事が導かれます。

\(1+\displaystyle\frac{1}{1+\displaystyle\frac{1}{1+\displaystyle\frac{1}{\cdots}}}=\tau=1.6180\cdots\)

コメント

連分数、黄金比、フィボナッチ数列など背景を探ってみると面白いですが、\(\{a_n\}\)の一般項をノーヒントで求める必要があり初見で解くには中々に厳しい内容です。逆にフィボナッチ数列や一次分数型の漸化式について慣れている人であれば解き切ることは十分可能であり、是非とも完答して他の受験生に差を付けたい所です。

投稿者: matsubushi

趣味で数学など

コメントを残す コメントをキャンセル

モバイルバージョンを終了