連分数と黄金比 (2018年 大分大・医)


 一見すると二項間漸化式の一般項と極限を求めるだけのありふれた問題に見えますが、与えられた漸化式から式変形により一般項を求める事は厳しいように思われます。

 このような場合小さい \(n\)に対して\(a_n\)の値を具体的に計算して、そこから一般項を予測する事で解決する場合が多いですが、本問の場合はそれでも一筋縄という訳にはいきません。

(1)の解答

初項及び漸化式より\(a_1\) ~ \(a_6\)の値は以下の通りである。

\(a_1=\displaystyle\frac{1}{1}, a_2=\displaystyle\frac{2}{1}, a_3=\displaystyle\frac{3}{2}, a_4=\displaystyle\frac{5}{3}, a_5=\displaystyle\frac{8}{5}, a_6=\displaystyle\frac{13}{8}\)

次に数列 \(\{b_n\}\) を \(b_1=b_2=1, b_{n+2}=b_{n+1}+b_n\) により定めると、\(b_1\) ~ \(b_7\)の値は以下の通りである。

\(b_1=1, b_2=1, b_3=2, b_4=3, b_5=5, b_6=8, b_7=13\)

従って数列 \(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の間に以下の関係式(*)が成り立つ事が推測される。

\(a_n=\displaystyle\frac{b_{n+1}}{b_n}\tag{*}\)

次に関係式(*)が任意の自然数\(n\)に対して成立する事を数学的帰納法により証明する。\(n=1\)の場合は先に記した\(a_1,b_1,b_2\)の値から関係式(*)は成立する。次に \(n=k~(k\geq1)\)の時に関係式(*)が成り立つと仮定すると

\(a_{k+1}=1+\displaystyle\frac{1}{a_k}=1+\displaystyle\frac{b_k}{b_{k+1}}=\displaystyle\frac{b_k+b_{k+1}}{b_{k+1}}=\displaystyle\frac{b_{k+2}}{b_{k+1}}\)

であるから、\(n=k+1\)の時も関係式(*)は成立する。以上より数学的帰納法から任意の自然数\(n\)に対して関係式(*)が成り立つ。

次に二次方程式 \(x^2=x+1\Leftrightarrow x^2-x-1=0\)の異なる2つの実数解をそれぞれ \(\alpha\) 及び \(\beta\) と置くと(\(\alpha>\beta\))

\(\alpha=\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2},~~\beta=\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2},~~ \alpha+\beta=1,~~ \alpha\beta=-1\)

が成り立つことから、数列\(\{b_n\}\)における漸化式に対して

\(b_{n+2}=b_{n+1}+b_n\Leftrightarrow b_{n+2}=(\alpha+\beta)b_{n+1}-\alpha\beta b_n\)

が成り立つ。従って\(b_{n+1}\)及び\(b_n\)の間には以下の2つの等式が成り立つ。

\(b_{n+2}-\alpha b_{n+1}=\beta(b_{n+1}-\alpha b_n)\)
\(\Leftrightarrow b_{n+1}-\alpha b_n={\beta}^{n-1}(b_2-\alpha b_1)={\beta}^{n-1}(1-\alpha)={\beta}^{n} \)

\(b_{n+2}-\beta b_{n+1}=\alpha(b_{n+1}-\beta b_n)\)
\(\Leftrightarrow b_{n+1}-\beta b_n={\alpha}^{n-1}(b_2-\beta b_1)={\alpha}^{n-1}(1-\beta)={\alpha}^{n} \)

上の2式より\(b_{n+1}\)を消去すると\(\{b_n\}\)の一般項は以下の通り。

\((\alpha-\beta)b_n={\alpha}^{n}-{\beta}^{n}\Leftrightarrow b_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}{\alpha-\beta}\)

従って式(*)より数列\(\{a_n\}\)の一般項は以下の通り求める事が出来る。

\(a_n = \displaystyle\frac{b_{n+1}}{b_n} =\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\displaystyle\frac{(\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2})^{n+1}-(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2})^{n+1}}{(\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2})^{n}-(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2})^{n}}\)
\(=\displaystyle\frac{(1+\sqrt{5})^{n+1}-(1-\sqrt{5})^{n+1}}{2\{(1+\sqrt{5})^{n}-(1-\sqrt{5})^{n}\}}\)

\(\{b_n\}\)はいわゆるフィボナッチ数列と呼ばれる非常に有名な数列であり、\(\{a_n\}\)の一般項を予測する為には各項の分子及び分母にフィボナッチ数列の各項が出現する事に気が付く必要があります。この事に気が付いてしまえば\(a_n\)の一般項をフィボナッチ数列により表現する事はそれほど難しくはなく、数学的帰納法による予測の証明も容易です。

その後はフィボナッチ数列の一般項を具体的に計算します。頻出タイプの隣接三項間漸化式である為特製方程式を利用して解くこととなりますが、対応する特製方程式の解がルートを含んだ分数式となる為、一度\(\alpha,~\beta\)と置いて解と係数の関係を利用しつつ文字のまま計算を進めた方が得策です。

結局\(\{a_n\}\)の一般項は対応する漸化式のシンプルさとは裏腹に、非常に複雑な形をしていることが分かります(従って直接一般項を予測する事は不可能)。

(1)の別解

方程式 \(x=1+\displaystyle\frac{1}{x}\Leftrightarrow x^2-x-1=0~\)の異なる2つの実数解をそれぞれ \(\alpha\) 及び \(\beta\) \((\alpha>\beta)\)と置き、数列\(\{c_n\}\)を次のように定義する。

\(c_n=\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}\)

この時 \(\alpha+\beta=1,~\alpha\beta=-1\) に注意すると

\(c_{n+1}=\displaystyle\frac{a_{n+1}-\alpha}{a_{n+1}-\beta}=\displaystyle\frac{1+\displaystyle\frac{1}{a_n}-\alpha}{1+\displaystyle\frac{1}{a_n}-\beta}=\displaystyle\frac{(1-\alpha)a_n+1}{(1-\beta)a_n+1}=\displaystyle\frac{\beta a_n+1}{\alpha a_n+1}\)
\(=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot\displaystyle\frac{a_n+\displaystyle\frac{1}{\alpha}}{a_n+\displaystyle\frac{1}{\beta}}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\cdot c_n\)

であるから数列\(\{c_n\}\)は初項 \(c_1=\displaystyle\frac{1-\alpha}{1-\beta}=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\)、公比\(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}\)の等比数列である。従って数列\(\{c_n\}\)の定義から数列\(\{a_n\}\)の一般項は以下の通り求める事が出来る。

\(c_n=(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n\Leftrightarrow\displaystyle\frac{a_n-\alpha}{a_n-\beta}=(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n\)

\(\Leftrightarrow a_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\cdots=\displaystyle\frac{(1+\sqrt{5})^{n+1}-(1-\sqrt{5})^{n+1}}{2\{(1+\sqrt{5})^{n}-(1-\sqrt{5})^{n}\}}\)

分数絡みの二項間漸化式(一次分数型と呼ばれる)についても特性方程式は存在しており、これが異なる2つの異なる実数解を持つ場合は上記のように\(\{c_n\}\)を定義する事で等比数列の漸化式に帰着させることが可能です。とはいえこのタイプの漸化式は誘導付きで登場する場合が殆どであり(多くの場合\(\{c_n\}\)に対応する数列が初めから与えられている)、誘導無しで解き切ることが出来た人は一握りでしょう。

また今回は別解という事で議論や計算を端折っており、特に\(\{c_n\}\)を定義する際に\(a_n\neq \beta\)を示す必要があります。従って別解においても相応の計算・記述量が要求される事には変わり有りません。

(2)の解答

\(k=\displaystyle\frac{\beta}{\alpha}=\displaystyle\frac{-3+\sqrt{5}}{2}\)とおくと、(1)における議論より

\(a_n=\displaystyle\frac{{\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1}}{{\alpha}^{n}-{\beta}^{n}}=\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n}{1-(\displaystyle\frac{\beta}{\alpha})^n}=\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot k^n}{1-k^n}\)

が成り立つ。また\(|k|<1\)より\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}k^n=0\)が成り立つので数列\(\{a_n\}\)の極限は以下の通りである。

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\frac{\alpha-\beta\cdot k^n}{1-k^n}=\alpha=\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)

指数関数絡みの極限に関する標準的な問題であり、(1)を突破できた受験生にとってはサービス問題と言えます。\(\{a_n\}\)の一般項を求めずとも特製方程式の解から極限値が\(\alpha\)となる事は推測出来ますが、\(\{a_n\}\)が確かに極限値を持つ事を示すことが出来ない限りはほぼ0点と思われます。

ちなみに与えられた漸化式から\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n\)は以下のように連分数表示可能であり、(2)の結論から黄金比\(\tau\)に一致する事が導かれます。

\(1+\displaystyle\frac{1}{1+\displaystyle\frac{1}{1+\displaystyle\frac{1}{\cdots}}}=\tau=1.6180\cdots\)

コメント

連分数、黄金比、フィボナッチ数列など背景を探ってみると面白いですが、\(\{a_n\}\)の一般項をノーヒントで求める必要があり初見で解くには中々に厳しい内容です。逆にフィボナッチ数列や一次分数型の漸化式について慣れている人であれば解き切ることは十分可能であり、是非とも完答して他の受験生に差を付けたい所です。

数列と相加平均 (1989年 京大理系 第2問)

\(n\)個 \((n\geq3)\) の実数 \(a_1,a_2,…,a_n\)があり、各 \(a_i\) は他の\(n-1\) 個の相加平均より大きくないという。このような\(a_1,a_2,…,a_n\) の組を全て求めよ。


 数列とその相加平均に関する興味深い出題です。京大入試らしく数列に関する条件は抽象的であり、まずは与えられた条件を不等式として表現する事から始める必要が有ります

解答

\(S=\displaystyle\sum_{i=1}^n a_i\) と置くと \(a_i\) 以外の \(n-1\) 個の相加平均は \(\displaystyle\frac{S-a_i}{n-1}\) で与えられる。従って \(i=1,2,…,n\)に対して以下の不等式\((1)\)が成立する。

\(a_i\leq\displaystyle\frac{S-a_i}{n-1}~~\Leftrightarrow~~na_i\leq S\tag{1}\)

 ここで、ある \(i~(1\leq i\leq n)\) に対して不等式\((1)\)の等号が成立しない場合を仮定すると、不等式の両辺を \(i=1,2,…,n\) について順々足し上げる事で以下の不等式\((2)\)を得ることが出来る。

\(\displaystyle\sum_{i=1}^n na_i<\displaystyle\sum_{i=1}^n S\tag{2}\)

 ところが不等式\((2)\)の両辺は式計算によりいずれも\(nS\)となるので、明らかに成立しない。従って先の仮定は誤りであり任意の \(i~(1\leq i\leq n)\) に対して以下の等式\((3)\)が成り立つ。

\(na_i=S~~\Leftrightarrow~~a_i=\displaystyle\frac{S}{n}\tag{3}\)

 ここで \(\displaystyle\frac{S}{n}\) は \(a_1,a_2,…,a_n\) の相加平均であり、\(i\) に依存しない定数である。従って等式\((3)\)が任意の\(i=1,2,…,n\)に対して成り立つ為には \(a_1,a_2,…,a_n\) が互いに等しい実数値を取る必要が有る。

 逆に\(a_1,a_2,…,a_n\) が互いに等しい実数値を取るならば問題文の条件(不等式\((1)\))は成立する為、求めるべき答えは以下の通り。

\((a_1,a_2,…,a_n)=(k,k,…,k)\)    (\(k\): 任意の実数値)

コメント

 不等式(1)の意味するところは「任意の\(a_i\)は\(a_1,a_2,…a_n\)の相加平均以下」であり、\(n=3,4\)あたりで実験してみると定数数列の場合を除いてどうしても相加平均を上回る項が出現します。

 そこで条件を満たす数列は定数数列のみであるという仮説を立て、それを立証する形で作成したものが上記の解答となります。与えられた条件から自力で仮説を立てて検証する論証力が問われており、計算量や記述量こそ抑え気味ですが決して簡単ではありません。

 ちなみに同年の文系では\(n=5\)の場合について出題されていますが、考え方は殆ど同じであり難易度はあまり変わりません。

有名公式に頼るべし② (1998年 JMO予選 第10問)

 \(x,y,z\)が正の実数を動くとき \(\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6}\) の最大値を求めよ。


 一般的な多変数関数の最大最小を議論する為には大学で学ぶ解析学の知識が必要となりますが、中高生を対象としたJMO予選においてそのような手法を用いる事は想定されておらず、それ以前に1変数の微積分に関しても(建前上は)範囲外となっています。

 従って本問は純粋な数式処理により最大値を導くことが出来るはずなのですが、その為にはある有名公式の力を借りる必要があります。

解答

\(A=\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6},~~~~ a=\displaystyle\frac{x^6}{x^6+y^6+z^6}\)

\(b=\displaystyle\frac{y^6}{x^6+y^6+z^6},~~~~ c=\displaystyle\frac{z
^6}{x^6+y^6+z^6}\)


 と定めると \(A,a,b,c\)は以下の式(1)及び(2)を満たす。

\(a+b+c=1\tag{1}\)

\(A=a^{\frac{1}{2}}b^{\frac{1}{3}}c^{\frac{1}{6}}~~\Leftrightarrow~~A^6=a^3b^2c\tag{2}\)

 \(A,a,b,c\) は正の実数であるので相加相乗平均の不等式及び式(2)より

\(a+b+c=\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{a}{3}+\displaystyle\frac{b}{2}+\displaystyle\frac{b}{2}+c\geq6\sqrt[6]{\left(\displaystyle\frac{a}{3}\right)^3\left(\displaystyle\frac{b}{2}\right)^2c}\)

\(\Leftrightarrow~~a+b+c\geq6\sqrt[6]{\displaystyle\frac{a^3b^2c}{108}}=6\sqrt[6]{\displaystyle\frac{A^6}{108}}=\displaystyle\frac{6A}{\sqrt[6]{108}}\)

\(\Leftrightarrow~~A\leq\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}(a+b+c)\)

 が成り立つ。この不等式に式(1)を代入する事で以下の不等式(3)を得る。

\(A\leq\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}\tag{3}\)

 相加相乗平均の不等式における等号成立条件より不等式(3)の等号成立条件は

\(\displaystyle\frac{a}{3}=\displaystyle\frac{b}{2}=c\)

 であるが式(1)よりこれは\((a,b,c)=\left(\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{1}{3}\displaystyle\frac{1}{6}\right)\)の時成立する。このような\(a,b,c\)を与える\(x,y,z\)の条件は

\(x^6:y^6:z^6=3:2:1\tag{4}\)

 \((4)\)を満たす\(x,y,z\)は無数に存在し、例えば\((x,y,z)=(\sqrt[6]{3},\sqrt[6]{2},1)\)は条件を満たす。従って不等式\((3)\)における等号を与える\(x,y,z\)の組は確かに存在するので、\(A=\displaystyle\frac{x^3y^2z}{x^6+y^6+z^6}\)の最大値は\(\displaystyle\frac{\sqrt[6]{108}}{6}\)である。

コメント

 本問を解く上でカギとなるのは以下に示す相加相乗平均の不等式となります(\(x_1,x_2,…x_n\)はいずれも負でない実数であり、等号は\(x_1,x_2,…x_n\)が全て等しいときにのみ成立する)。

{\frac  {x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{n}}{n}}\geq {\sqrt[ {n}]{x_{1}\cdot x_{2}\cdots x_{n}}}\,,


 この不等式自体は大学入試等でも頻出であり殆どの受験者は知っていたと思われますが、今回与えられた関数の形から相加相乗の利用を思いつくのはかなり大変です。

 自分の場合JMO予選ということで最初から微分による解法を放棄し、何とか相加相乗に持ち込めないかと苦慮した結果上記のような解答に行き着きました。他にも別解があるような気がしますが、自分で見つける事はついに叶いませんでした。


 

四乗数と素数 (1969年 第11回IMO ルーマニア大会 第1問)

以下の性質を持つ自然数 \(a\) が無限個存在することを示せ。

(性質): \(z=n^4+a\) はどの自然数 \(n\) に対しても素数ではない。

 任意の \(n\) に対してある \(n\) の整式が合成数(=素数ではない)となるかを判断する場合、剰余を考える事で解決する場合も多いですが、本問のケースでは \(n\)と共に\(a\)も変化させる必要が有るため中々上手くいきません。

 本問を解くための鍵は「合成数は2つの2以上の自然数の積で与えられる」という、ごくごく当たり前の事実となります。

解答

 2以上の自然数 \(b\) に対して \(a=4b^4\)と置くと\(z\)は以下の通り因数分解出来る。

\(z=n^4+a=n^4+4b^4=(n^4+4b^2+4b^4)-4b^2\)
\(=(n^2+2b^2)^2-(2b)^2=(n^2+2b^2+2b)(n^2+2b^2-2b)\)

 更に \(n\geq1\) かつ \(b\geq2\) であるから

\(n^2+2b^2+2b\geq2\)
\(n^2+2b^2-2b=n^2+2b(b-1)\geq2\)

 従って任意の自然数 \(n\) に対して \(z\) は2 つの2以上の自然数の積として与えられるため合成数である。\(a=4b^4~(b\geq2)\) の形で与えられる自然数 \(a\) は無数に存在する為、問題文で与えられた性質を満たす自然数 \(a\) は確かに無限個存在する。

コメント

 「\(n\)に関する整式が常に合成数」という条件から\(n\)に関する因数分解を利用するという着想に至ることが出来ればあとはほぼ一本道となります。解答に当たっては\(x^4+4y^4\)の因数分解に関する予備知識が必要となりますが、IMO参加者という前提に立てば問題となる事は無いと思われます。

 なお \(b=1\) の場合、 \(n=1\) の時に\(z=5\) であり条件を満たさない点に注意が必要です(\(n^2+2b^2-2b=1\)となる為)。

 第1回大会(1959年)の頃に比べると問題の難易度はかなり上がっていますが、現代のIMOの問題と比較するとまだまだ穏やかな印象を受けます。

歴史の幕開け (1959年 第1回 IMO 第1問)

 任意の自然数 \(n\) について, \(\displaystyle\frac{21n+4}{14n+3}\) は既約分数である事を証明せよ

 60年以上の歴史を持つIMOの第1回大会は東欧ルーマニアにて開催されました。以前の記事でも言及しましたが、IMOは元々東側諸国内で始められた大会であり第1回大会は開催地ルーマニアを含む7か国が参加しました。

 本問はIMO第1回大会の第1問であり、IMOの歴史におけるまさしく最初の1ページという事になります。

解答

 \(21n+4\) 及び\(14n+3\) の最大公約数を\(p~(\geq1)\) と置くと、互いに素な自然数\(q, r\) に対して、

\(21n+4=pq\tag{1}\)
\(14n+3=pr\tag{2}\)

 \((1)\times{(-2)}+(2)\times{3}\) により\(n\)を消去すると、

\(p(3r-2q)=1\tag{3}\)

 式\((3)\)及び\(3r-2q\)が整数である事から\(p=1\) であり、任意の自然数\(n\)に対して\(21n+4\) と\(14n+3\)は互いに素である。従って与えられた分数 \(\displaystyle\frac{21n+4}{14n+3}\)は\(n\)によらず既約分数となる。

コメント

 「有理式が既約分数」⇔「分母と分子が互いに素」と読み変えれば、あとは大学入試などでも時々見かける整数問題となります。今回は最大公約数を\(p\)と置いて議論を進めましたが、本問には別解も多数存在しており、例えばユークリッドの互除法によっても\(21n+4\) と\(14n+3\)が互いに素である事は容易に確かめる事が出来ます。

 現代のIMOと比較すると問題の難易度は非常に低く、黎明期における難易度調整の試行錯誤が感じられます。最初の数年は本問と同様に大学入試レベルの出題が続きますが、ほどなくして参加国の増大と共に問題のレベルも急上昇する事となります。

 

バーゼル問題の初等的解法 (2020年 慶応大・医)


 平方数全ての逆数和が収束する事は古くより知られていましたが、具体的にどのような値に収束するのか疑問は1644年に提起されて以降、長らく未解決でした。

 この疑問は提起から凡そ100年後の1735年にレオンハルト・オイラーによって解決され、彼の出身地から「バーゼル問題」と呼ばれています。オイラーが提示した証明法はマクローリン展開など、いわゆる大学数学を利用したものでしたが、現在では初等的な証明法(高校数学のみによる証明法)も幾つか知られています。

 本問はこのバーゼル問題を背景とした内容となっており、数学史上における難題の証明を上手く大学入試に落とし込んでいます。

解答

(1)の解答


 特に難しい部分はありませんが、本問の結果を以降の設問で繰り返し利用する事になる為、ケアレスミスだけは許されません。

(2)の解答

(い)~(え)


 (い)に関しては代入計算を行うだけですが、(う)及び(え)に関しては和の順番を上手く組み替えた上で(1)の結論を利用する必要があります。S3を求める過程では直前に求めたS2の値を利用する事で計算量を減らすことが可能であり、この考え方が次の設問で重要となります。

(お)


 (う)及び(え)の時と同様に(1)を適用する為に二項ずつ纏めることでSn+1とSnに関する漸化式を導くことが出来ます。(う)や(え)を解く段階で漸化式の予想が出来た場合は、空欄補充式である本問の特徴を生かして解答時間を短縮する事も可能です。

(か)


 二項間漸化式に関する教科書レベルの計算問題であり、前問まで解答できた受験生にとってはサービス問題と言えます。折角なのでn = 2, 3の場合についても代入計算を行い、(う)及び(え)に関する検算を行うと良いでしょう。

(き)


 関数f(x)とg(x)の関係性は三角関数における以下の関係式により即座に導くことが可能です。

\(\displaystyle\frac{1}{\tan^{2}{x}}+1=\displaystyle\frac{1}{\sin^{2}{x}}\)

 上記公式は三角関数における第4の相互関係としての導出自体は容易であるものの、他の公式と異なり教科書や参考書によっては収録されていない場合があります。上記公式の存在を知らない場合はg(x)をf(x)で表現する着想に自力で至る必要があり、結果として思わぬタイムロスに繋がる危険性があります。

(く)


 これまでの結果と不等式 \(\sin{\theta}<\theta<\tan{\theta}\)を利用したはさみうちの原理に持ち込むことで、平方数の逆数に関する無限級数が \(\displaystyle\frac{\pi^2}{6}\)に収束するというバーゼル問題に対する結論を得る事が出来ます(\(n\Rightarrow\infty\) の時 \(2^{n}-1\Rightarrow\infty\))。

コメント

 慶応医学部の数学という事で長丁場ではありますが、同大学の問題としては比較的解き易い部類に入ります。他の問題との兼ね合いもありますが、最低でも(か)までは押さえておき、願わくばある程度時間を使ってでも完答しておきたい所です。

 またバーゼル問題は非常に有名である事から、結論を知っていた受験生も少なからず存在したと思われます。その場合比較的難度の高い空欄(く)に関する部分が単なる知識問題に化ける為、解答時間の大幅な短縮につながった事と思われます。

初手が全て (2003年 京大理系 後期 第4問)

 数列anに関する条件は極めて抽象的であり、一見すると命題を示すことは困難であるように思われます。本問を解く上では与えられた唯一の条件「anの各項は全て正」を使う事となりますが、どのように利用するかがカギとなります。

 なお文章中では言及されていませんが、以降の解答ではnが整数であるものとして議論を進めています。

解答


 本問は背理法の利用に気付けたか否かが全てと言っても過言ではありません。背理法に舵を切った後は命題の否定から二項間漸化式の要領で④の不等式を導き、右辺がn→∞で負に収束することから「anの各項は全て正」に対する矛盾を導くことが出来ます。

コメント

 然るべき解法を選択できれば短時間で解答可能という点において実に京大らしい入試問題であり、背理法に辿りつくまでの時間が解答時間に直結します。計算・記述量が少ない分丁寧な論述を心がけて取りこぼさないようにしたい所です。

余談

 試験場では上述の極限に基づく解法で十分と思われますが、実際は不等式④の右辺に関して

\(\displaystyle\frac{a_0+2p}{2^n}-2p<0~~\Leftrightarrow ~~n>\log_2(1+\displaystyle\frac{a_0}{2p})\)

 となるので、仮定が真であれば\(\log_2{(1+\displaystyle\frac{a_0}{2p})}\)以上のn全てに関して\(a_n\)は0以下となります。記述量や計算量は若干増えますが、「十分大きな」といった曖昧な表現を排除できるため、証明はより厳密なものとなります。

3次元塗り絵 (2022年JJMO予選 第8問)


 穴の開いたルービックキューブのような立体に数字を書き込むタイプの問題で、厳密には塗り絵ではありませんがタイプとしては同じです。

 ルールに従って数字を書き込むにあたっては6面全ての状況を一度に把握した所ですが、この立体をどのような角度から見たとしても同時に見る事の出来る面は高々3つとなります。本問を解くに当たってはこの視覚的制約を如何にして解消するかが最初のポイントとなります。

解答

 下図左側のように立体の上面8つのブロックにA~Hとアルファベットを振り、それに対応する展開図を右側のように定める(同じアルファベットのマス目には同じ数字が入るものとする)。


 ここで展開図において緑色で示されたマス目は、C,D,Eに対応する数字が書き込まれた側面とE,F,Gに対応する数字が書き込まれた側面により共有されたブロックに由来する。従って緑色に対応するマスに書き込める数字はA,B,Hに対応する数字のいずれかである。同様にして展開図青色の領域にはB,C,Dに対応する数字、黄色の領域にはD,E,Fに対応する数字、赤色の領域にはF,G,Hに対応する数字が書き込まれる。

(i) 緑色のマス目にA,Bに対応する数字が入る場合

 今1つのマス目にAまたはBが入ることをA/Bのように表現する。緑の箇所にA/Bを対応させた後に、4つの側面について時計回り或いは反時計回りにルールに従って対応するアルファベットを当てはめると下図①のようなパターンのみが許容される。

 そして各側面と底面の共有部分を考える事で、底面におけるアルファベットのパターンは下図②のようになる。

 ところが底面では既にB,D,F,Hが割り振られている為、A/B, C/D, E/F, G/Hの箇所はそれぞれA,C,E,Gと決定される。残りの二択の部分についても最終的には下図③の通り唯一通りに定まり、結局緑のマス目にA,Bに対応する数字が入るようなパターンは1通りしか存在しない。

(ii) 緑色のマス目にA,Hに対応する数字が入る場合

 (i)と同様に考えると、下図に示す1パターンのみが与えられる。

(iii) 緑色のマスにB,Hに対応する数字が入る場合

 E,F,Gに対応する数字が書き込まれた側面から始めて時計回りに埋めてゆくと、最初にC,D,Eに対応する数字が書き込まれた側面において矛盾が生じる(赤色及び緑色で示された4か所のマスに対して、対応し得るアルファベットがB,G,Hの三種類しか存在しない)。従ってこの場合は適切なアルファベットの割り振り方は存在しない。


 以上より上面におけるブロックの配置を決定した場合、残るブロックの配置の仕方は(i)と(ii)に対応する2通りである。そしてA~Hに1~8までの数字を割り当てる方法は8!通りである為、求める場合の数は2×8! = 80640通りである。

コメント

 展開図を利用して与えられた立体を二次元的に見る事で見通しが非常に良くなります。その後はルールに従ってあり得るブロックの置き方を丁寧に考えるだけなのですが、試験場で落ち着いて考えるのは存外難しく正答率は低めだったと思われます。

3つの直角二等辺三角形 (2022年 JJMO予選 第6問)


 タイトル通り3つの直角三角形を組み合わせて出来る凹五角形を題材としています。直角二等辺三角形の性質を最大限に利用すると共に、凹五角形の面積に関する情報をどのように利用するかが鍵となります。

解答


 上記解答では△ABDと△EFDが相似である事を示した後に凹五角形の面積を求めていますが、実際には凹五角形の面積を求めるアイデアとして凹五角形を3つの三角形に分解し、その面積を求める過程で相似の利用に行きついています。

コメント

 結論に至ってしまえば何という事はありませんが、相似の利用と凹五角形の分割に至るまでには色々と試行錯誤が必要であり決して簡単ではありません。

 とはいえ時間内に解けない内容ではない為、平面図形を得点源にしている人であれば本問を確保して合格を手繰り寄せたい所です。

相似と面積比 (2022年JJMO予選 第11問)


  第4問と同様に自力で作図するタイプの平面図形問題ですが、作図に関しては第4問よりも容易です。但し作図以降の流れは決して容易とは言えず、与えられた角度や面積に関する条件を無駄なく使い切るセンスが必要です。

解答

コメント 

 ∠ABP=∠PCBから△PABと△PBCが相似である事に気が付けば糸口が見えてきますが、その他にも△PABと△PCAの面積から辺の長さに関する情報をうまく引き出す必要があり、決して簡単な問題ではありません。

 但しJJMO予選の11問目としては作図の容易さも相俟ってかなり解き易い部類である事も事実であり、最終盤の問題だからといってスルーを決め込むのは少々勿体ないかもしれません。